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ブロックチェーン上で契約を自動的に執行する仕組み「スマートコントラクト」の可能性や、ブロックチェーンが今後の金融ビジネスに及ぼす影響について考えるセッションが9月6日、日経FIN/SUMの最終日に行われた。ビットフライヤー・ブロックチェーンの加納裕三代表取締役が、金融ビジネスにブロックチェーンを用いるべき理由として、その安全性の高さを指摘、「ビットコインのブロックチェーンは一度も破られていない」と強調した。そのうえで「令和元年がブロックチェーン元年と言われるようにしたい」などと抱負を語った。
「STOはICOとは別モノ」
セッションのテーマは「スマートコントラクトの社会実装前夜~ブロックチェーンがもたらす金融ビジネスの可能性~」。加納氏のほかに、日本セキュリティトークン協会の増田剛代表理事、クリプタクトの増田俊介取締役が登壇。モデレーターはQUICKイノベーション本部の名和達彦部長が務めた。
まず増田剛氏がセキュリティトークンについて解説。さらにトークンの類型を示し、スマートコントラクトの定義やメリットを紹介した。
またセキュリティトークンオファリング(STO)とICOを比べ、「トークン、ブロックチェーンを活用した資金調達手段である点は同じだが、ICOは詐欺も多くイメージが悪い」と指摘。そして「STOを『規制準拠型ICO』と説明する人もいるが、協会としては、ICOとは別モノであって、むしろ『既存の証券化の高度化』と位置づけてマーケティングしている」と明かした。
加納氏はbitFlyerのブロックチェーン「miyabi」を紹介しながら、金融ビジネスのスマートコントラクト活用例を示した。事例としてプリペイドカードの電子化を挙げ、カード発行、合算、決済業務に使えると紹介。スマートコントラクトを使う理由として、有効期限を付けられることを挙げていた。
増田俊介氏はクリプタクトが取り組んでいることとして、「市場が未成熟で競合が存在しない分野」として、ファンド(改正金商法、来年)、オプション(取引)、STOを紹介。さらには医療用画像流通システムでの利用についても話した。
「リブラの市場での評価は定まっていない」
セッションでは、司会の名和氏がFacebookのデジタル通貨「Libra(リブラ)」について質問した。
これに対し増田俊介氏は、フェイスブックや、リブラ協会加盟のPayU(オランダ)の親会社であるNASPERS(南ア)を引き合いに、リブラ構想の発表が株価にポジティブな貢献したとは言いがたいとしたうえで、「リブラを否定するわけではないが、市場の評価は定まってないということ」と述べた。
リブラをWin95にたとえている加納氏は、(ブロックチェーンや暗号資産について)話題にしていたのがクリプトの投資家だけだったが、一気にその幅が広がったとし、「ビットコイン以来のキラーコンテンツだ」などと評価した。
増田剛氏も「リブラ協会に入った会社はトークンを付与されることになっていることもあり、これまでセキュリティートークンはニッチ、マイナーな話題だったが、リブラのおかげで話題が広がった」とポジティブな反応を見せた。
令和元年はブロックチェーン元年になる?
最後に増田剛氏は「今までキラーアプリ、ユースケースがなかったが、今年はリブラが発表され、IBMのサプライチェーンが商用化フェーズに入るなど実用フェーズに入ってきた」と現状に対してポジティブな見方を示し、今後への期待を表明した。
増田俊介氏はブロックチェーンエンジニアが増えていると指摘、「電話がメールになり、サーバーも自前からクラウドになったように、ブロックチェーンも今後実用に向けて進んでいく」との考えを示した。
加納氏は、規制と技術の両面で大きな変化が起きていると指摘。なかでも日本は暗号資産関連で2つも法案が成立しており、「規制については世界のトップランナー。FATFの議論をみても日本のほうが進んでいるように感じている」などと話した。
セッションの冒頭には、QUICKイノベーション本部の関一朗氏が、同社とクリプタクトが共同開発しているブロックチェーン向け金融・経済情報サービスのベータ版について報告した。
coindesk JAPANより転用