バーチャルバンキングとオープンAPIの2大潮流、フィンテックで重要な4技術とは

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今、多くの金融機関はデジタルトランスフォーメーション(DX)に注力している。QRコード決済やブロックチェーン技術など、最新のIT技術を活用することで、既存の金融業務枠に囚われないサービスを次々と生み出そうと模索している。世界のバンキングサービスにも詳しいオラクルフィナンシャルサービス グローバルビジネスユニット リージョナル セールス ディレクターの宮國均氏に話を聞いた。

オラクル フィナンシャルサービス 
グローバルビジネスユニット
リージョナル セールス ディレクター
宮國均氏

注目すべき「バーチャルバンキング」と「オープンAPI」

 理想的な金融サービスへ変革していこうという各国政府の取り組みは、新しいデジタルバンクの成長を推し進めています。こうしたグローバルレベルの金融トレンドで私が注目している潮流は2つあります。それは、「バーチャルバンキング(仮想銀行)ライセンスの発行」と「オープンAPI(Application Programming Interface)を推進する規制改革」です。 

 アジア太平洋地域では、シンガポール、香港、マレーシア、台湾、韓国でバーチャルバンキングライセンスの発行が行われており、競争の活性化と業界のプレーヤー数の拡大の推進が図られています。 

 バーチャルバンキングの言葉の定義は国によって異なりますが、今起きているのは、非金融機関がインターネットを利用した無店舗のバンキングサービスを提供する際に、金融当局や政府がバンキングのライセンスを与えるというものです。 

 確かに無店舗で銀行業を行うということだけを見れば、日本ではもう数年前からインターネット専業銀行が出ているので、これもバーチャルバンクと言えなくはありません。しかし、昨今の動きでは非金融業界、たとえば配車サービス事業者などが金融サービスを提供していくといったことが起きているのです。 

 一方、オープンAPIの推進は、日本や英国、オーストラリアなどで進められているトレンドです。APIを介してシステムの接続仕様を公開し、提携企業のシステムと連携する。これにより、これまで金融業界が提供していなかったような新サービスを提供する取り組みです。 

 日本で2017年に成立した改正銀行法は、銀行にオープンAPI化を法的に義務付けるものではありません。しかしながら、銀行に対してフィンテック企業との連携、協働に係る方針の策定や電子決済など、代行業者に求める基準の作成およびこれらの公表などを求めています。このような制度的な枠組みによって、今後はフィンテック企業だけでなく、自動車ディーラーや旅行会社といった異業種と連携して、新たなエコシステムを構築し、オープン・イノベーションが推進される方向に動いていくものと考えます。 

バンキングのデジタル化を支える4つの技術

 こうしたバンキングのデジタル化を支える技術は4つあると考えています。それは「オープンAPI」「機械学習(ML)・人工知能(AI)」「ブロックチェーン」「クラウドベースのプラットフォーム」です。 

 オープンAPIは先述のとおりなので、ML・AIから説明しましょう。 

 長年にわたり、銀行は顧客の意思決定の洞察を得るためにBI(ビジネスインテリジェンス)に頼ってきました。BIで顧客動向を分析し、先回りして最適なオファーリング(提案)をするという施策です。 

 たとえば、BIの分析結果に基づき、支店に来られた顧客に対して新商品を勧めたり、DMやメールでキャンペーンを行っています。また、口座の入出金状況からライフイベントを推測してローンを提案したりしています。しかし、BIツールで収集できる顧客データでは予測能力に限界があり、必要な情報に基づいた決定を下して、ビジネスを成長させるのに十分な先見性がない可能性があります。 

 一方で、堅牢なアルゴリズム、学習モデル、および高速コンピューティングに基づくMLは、正確な予測と深い洞察に基づき、より良い意思決定を可能にする機能があります。フィンテックとML・AIを活用することで“一歩先”のサービスが可能になります。PFM(Person Financial Management)のようなフィンテックサービスにより、顧客の詳細なライフイベントが把握できます。そうしたデータをML・AIで分析し、より詳細な洞察と精緻なマーケティングサイクルにつなげるのです。 

 ブロックチェーンもMLやAIと同様に注目されている分野ですが、本格的な稼働はこれからでしょう。 

 ブロックチェーンはトランザクションの信頼性向上や不正行為防止を目的に導入することが多い技術です。その中で私が注目しているのは、「スマートコントラクト」です。 

 スマートコントラクトとはブロックチェーン技術を応用し、契約の成立や条件判定を自動的に実行させるものです。金融ビジネスは契約に基づいてプロセスを遂行するものですから、金融分野でも重要度は増すでしょう。 

 最後のクラウドですが、これは「弾力性のあるインフラ」という観点からも“核”になります。顧客の志向はデジタルにより新しい銀行に向いてきているので、銀行はタイムリーに最適なシステムを構築する必要があります。また、新しいデジタルバンクは、自社製品を提供するだけでなく、フィンテックなどのパートナー製品やサービスとコラボレーションしたシステムが求められます。これらを実現する上で、銀行は迅速に柔軟かつ最適なシステムをパートナーと構築する必要があり、「オープンなクラウドベースのプラットフォーム」の活用が必須であると思います。

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