ブロックチェーンゲームが秘める新たな可能性―その開発と運用について【CEDEC 2019】

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近年の仮想通貨ブームにより、運営の主な技術となったブロックチェーンも大きく注目を浴びました。ビデオゲームでもこの技術を利用した「ブロックチェーンゲーム」が登場。その開発と運営について解説します。

近年の仮想通貨ブームにより、そのベース技術となったブロックチェーンも大きく注目を浴びました。ブロックチェーンの技術は仮想通貨だけではなく、今後は様々なサービスに利用されることが見込まれています。ビデオゲームもまた、この技術を利用した「ブロックチェーンゲーム」が登場しています。

ではブロックチェーンゲームをどのように開発し、運用していくのでしょうか?2019年9月4日、パシフィコ横浜にて開催された「CEDEC 2019」では、「ブロックチェーンゲーム開発と運用、ブロックチェーンゲーム開発とソーシャルゲーム開発の違い。クリプトダービーの事例」のセッションが行われました。竹村也哉氏が代表取締役を務めるプラチナエッグが運営する『クリプトダービー』を題材とした講演が行われました。

ブロックチェーンゲームの定義とは?

そもそものブロックチェーンとはなんでしょうか?竹村氏は簡潔に、「改ざんがしにくいみんなで書き込める分散データベース」であると説明します。

最近はブロックチェーン上でプログラムを動かせるものが多くなっているといいます。ではこの技術を使ったブロックチェーンゲームとはなんでしょうか?竹村氏は「ブロックチェーンを使って資産の取引をして、資産を稼ぐことができるゲーム」だと定義しました。

続いて自身の会社が開発・運営している『クリプトダービー』を例に挙げ、簡単に紹介。一言で仮想通貨による競馬だと説明します。レース予想をしたり、馬主になったり現実の競馬のようなゲームプレイで、実際に仮想通貨によってお金を稼げることを特徴としています。

「稼げるゲーム」にすると明言しており、現実の競馬が年間で売り上げる2.7兆円の5%である、1350億円の売り上げを目指しています。

しかし竹村氏は自分のゲームに対し、「ちょっとグラフィックが弱く見えますよね」とやや自虐的に語るのです。

その理由として、まだブロックチェーンゲームの市場が小さく、ほとんど注目を集めていない状況を竹村氏は指摘します。前例が少なく、今回の講演もまずは「ブロックチェーンゲームの未来を感じてもらうこと、作ってみたくなってもらうこと」を重視していました。

今までのゲームとの違い

ではブロックチェーンゲームと今までのゲームはなにが異なっているのでしょうか?竹村氏は普通のゲームの問題として、購入や課金などで「お金が無駄になる」ことで、「資産が手元に残らない」ために、ゲームを「うまくなっても虚しい」と指摘します。

そこでブロックチェーンゲームは上手くゲームプレイすればするほど資産が増えるため、以上の問題が解決できる点を挙げました。

いささか露悪的にも聞こえますが、重要な点にゲームでお金を稼げることで、現実の経済と繋がることだといいます。竹村氏はブロックチェーンゲームが行きつく先として、「麻雀やバックギャモンのようなゲームにお金を賭けて遊ぶものに近づくのではないか」と展望を語ります。

ここまでお読みになられたならば「それはギャンブルではないか?」と思われたと思いますが、竹村氏は「個人的な考えでは、その境目はない」と説明。開発している側からすれば境目はなく、ブロックチェーンゲームはギャンブルに非常に近いものである……と認識しているそうです。

ソーシャルゲームとの比較

とはいえ現在はそもそものユーザーが少なく、このセッションの参加者にもブロックチェーンゲームの開発者がまったくいないほどで、あまりにも市場が小さい問題があるのです。もちろんギャンブルに近しい性質を持つため、法的な問題をクリアすることも課題となっています。

そこでユーザーを呼び込み、離脱させない運営についてはどうでしょうか?この点はソーシャルゲームと比較されますが、ブロックチェーンゲームの場合は「ソーシャルゲームの10倍くらいユーザーに密接に関わり、ケアが必要」だと竹村氏は説きました。

というのも、あらかじめブロックチェーンゲームではユーザーが資産を投じているため、いかにユーザーが損をしないようにするか対応することが多くなるからです。また、運営がロードマップをユーザーに提示していくことも重要だと指摘。竹村氏は「株主総会で企業の今後を株主に説明するように、運営は頑張ってますと言わなければならない」と例えました。

そのため、ソーシャルゲームのガチャによるビジネスモデルをベースとしたゲームデザインとは反りあわず、またゲームの持つ目的も異なるためにユーザー層も違ってくるそうです。まだ市場が小さいため、広告には「稼げるゲーム」を強く押し出したり、地道に地方へ説明会へ行ったりしながら、新規にユーザーを開拓している段階だといいます。

ブロックチェーンゲーム開発の備考

ブロックチェーンゲーム開発において必要なこと、観ておくべきことなども説明。ひとつは外国人との対応することが多いため、英語ができることを挙げました。また、見ておくべきサイトにDappRadar のようにお金の動きが掲載されているサイトや、dAppsMarketといった情報サイトなどをチェックし、市場の動向を追っていくことも推奨します。

竹村氏は「あえて怪しいサイトも観ておくことが重要」とも説明します。「仮想通貨で大儲けする」みたいなまとめサイトには、逆にユーザーが何を求めているかが肌感覚でわかるそうです。

そして法的な問題を意識していくことも強調。「ブロックチェーンゲームには適用される法律がないため、グレーゾーンなんです」と竹村氏は語ります。どこまでがセーフで、どこからがアウトなのかが曖昧ですが、弁護士や金融庁とやり取りしながら進めていくことが重要だと指摘します。怖がらずに「覚悟と信念を持ってやること」だと話していました。

竹村氏は最後に「ブロックチェーンゲームは今までのゲームの拡張になり得る」と可能性を語り、「今までのゲームよりも一階層高いレベルのエコシステム」であるとまとめました。

GameBusiness.jpより転用

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