金融庁は、分散型金融の新たなガバナンス体制構築に向けて、「ガバナンス・フォーラム」を2020年春にも開催する。遠藤俊英・金融庁長官が、9月5日に行われた日経FIN/SUMの講演で明らかにした。
6月の主要20カ国・地域首脳会議(G20)で議論された「マルチステークホルダー・ガバナンス」を踏まえて、日本が国際的な議論を主導する姿勢を改めて鮮明にしたかっこうだ。
国際共同研究プロジェクトの発展型
金融庁はこれまでブロックチェーン「国際共同研究」プロジェクトを進めてきた。これには各国の金融当局のほか、中央銀行、国際機関、国内外の主要大学、著名開発者などが名を連ねていた。
遠藤長官の5日の講演によれば、新しく設置されるフォーラムは、このプロジェクトを発展させ、より幅広いステークホルダーが集う場になる。そこでは、ブロックチェーンにもとづく分散型金融システムの課題や、今後の活用可能性などが議論される見込みだ。
こうした金融庁の取り組みの狙いは、金融の規制・監督体制のアップデートを自ら先導するものといえそうだ。分散型金融が浸透する時代には、当局による規制だけではなく、多様な利害関係者(ステークホルダー)を含んだガバナンス体制の構築が求められる。
遠藤長官は同じ講演で、「自律分散型の技術の進展によって今後、規制の効果が十分に及ばない状況が想定され、従来の金融規制に変わる新たなアプローチを開拓することが必要だと考えております」とも述べた。
遠藤長官は「このフォーラムを分散型金融の問題を議論する場としてより発展させていきたい」と決意を表明している。
この日、遠藤長官の講演とは別のセッションで、G20福岡を模したマルチステークホルダー・ガバナンスのセッションも行われた。G20福岡でパネリストも務めた松尾真一郎氏が「技術者も“法や秩序”を作りうる」とも指摘し、さまざまな利害関係者が集まって議論することの重要性を再確認。パネリストからも、来年春のガバナンス・フォーラムについての期待の声が上がった。
麻生財相「分散型金融には新たな規制の枠組みが必要」
また麻生太郎財務大臣が同日最後に講演、フェイスブックのデジタル通貨「リブラ」にも言及。分散型金融については「既存の規制が想定していない新たな課題がないか包括的に考える必要がある」と述べ、新たな規制の枠組みが必要との認識を改めて示した。
coindesk JAPANより転用