ビッグブルーの支配? IBM、ハイパーレジャー技術運営委員会の半数以上を占める

Share on facebook
Share on google
Share on twitter
Share on linkedin

ハイパーレジャー(Hyperledger)の技術運営委員会(TSC)でIBM関係者の数が2倍になり、企業向けブロックチェーン・コンソーシアムにおける同社の影響力拡大に懸念が広がっている。

先週発表された2019-2020年のTSCメンバーは、11人のうち6人がIBM関係者だった。5人がIBM本体の社員、もう1人のマーク・ワグナー(Mark Wagner)氏はIBMの子会社、レッド・ハット(Red Hat)の上級主席エンジニアだ。

ライバル企業に広がる混乱

昨年と比較すると、TSCメンバーは昨年も計11人だったが、IBM関係者は2人のみだった(ワグナー氏は昨年もメンバーだったが、IBMのレッド・ハット買収は2019年7月まで成立していなかった)。

来週、TSCの新たな議長が選出された後、新しい委員会の運営がスタートする。

IBMは、コンソーシアム内で最大かつ最古のプロジェクトであるファブリック(Fabric)のコード作成に貢献し、ハイパーレジャーで主要な役割を担い続けてきた。その一方で、この結果に混乱するライバル企業の参加者もいる。

オラクルでブロックチェーン・プラットフォーム・アーキテクトを担当するトッド・リトル(Todd Little)氏は、TSCのメーリングリストに以下のように記した。

「今やIBMがTSCをコントロールしていることは非常に明らか。これはハイパーレジャーが目指したい方向だろうか?」

最も広く導入されている企業向けブロックチェーン・プラットフォーム、3つのうちの1つが危機に直面している。他の2つはR3のコーダ(Corda)と、イーサリアム・ブロックチェーンから派生したもの。

ハイパーレジャーのTSCは、技術的な問題に重点的に取り組む作業部会の設置、プロジェクトの承認、アップデートのレビューを行う責任を担う。

また、投票率の低さも委員会でのIBMの支配に対する不信の要因となった。ハイパーレジャーのメンバーのわずか33%しか票を投じていない。

「投票率の低い選挙であったこと自体が、協力関係にあり、組織化されたグループによる支配を表している」と企業向けブロックチェーン・コンサルタントのヴィピン・バラタン(Vipin Bharathan)氏は述べた。

この記事の掲載時までにIBMからのコメントはない。

本当にIBMが支配しているのか?

ハイパーレジャーのエグゼクティブ・ディレクター、ブライアン・べーレンドルフ(Brian Behlendorf)氏は、メーリングリストでの議論の中で今回の懸念について返答した。

ハイパーレジャーの開発者は「まず第一に個人として参加し貢献することが期待されている。社員としての立場はその次」と同氏は記した。

同氏は、過去に雇用主への忠誠心に従って行動するTSCメンバーがいたときには、ハイパーレジャーのスタッフが個人的にその人物にフィードバックを行うことで、不適切な行動に注意を与えたと述べた。

そして、ハイパーレジャーは、メンバーが期待していた結果ではないという理由だけで選挙結果を変えることはできないと付け加えた。

CoinDeskとのインタビューでべーレンドルフ氏は、今回の投票率はハイパーレジャーの過去の投票率と違いがないことを指摘した。

「リナックスや他のオープンソース組織のように、100%あるいは80%の投票率にはならない」

今回の選挙では、600人の有権者のうち約130人が票を投じた。ハイパーレジャーのコード作成に貢献した人物であれば誰でも投票が認められ、誰でも立候補もしくは候補者の推薦が可能だ。

IBMはコンソーシアムに参加している他の企業よりも技術的な貢献度が高いため、ハイパーレジャーに対して極めて大きな支配力を持つのではないかという懸念はこれまでにも上がっていたとべーレンドルフ氏はメーリングリストで述べた。

「IBMがこのような結果を望んでいなかったことは、はっきりしていた」と同氏は記した。

「IBMは、開発者の力をより引き出すためにファブリックをハイパーレジャーに導入し、多くの人の取り組みによって、IBMの人員を補完しようとした」

ハイパーレジャーはIBMと連携して、テクニカルプロセスと一般の認知の獲得に取り組んできた。

「もう済んだことと考えている」とべーレンドルフ氏。

「IBMのファブリックへの貢献はもはや半分以上という状態ではない。ハイパーレジャーにはファブリックだけでなく、他にも多くのプロジェクトがあり、IBMはそれらをサポートして、インディ(Indy)とソウトゥース(Sawtooth)を後押しし、さらにはベス(Besu)の受け入れも行っている。おそらくこれが、他の有権者がIBM関係の候補者に快く投票した理由の1つだろう」

前ヘ進む方法

そして同氏は、委員会の人数拡大について理事会と議論する、もしくは「新しいTSCメンバーを今回限り数人加えて、現行のTSCチームをより大きなものにする」ことを提案した。

だがTSCの要件が不足しているように思えることには、ほとんど触れなかった。同氏は、現在の投票プロセスではハイパーレジャー以外のメンバーが運営委員会のメンバーとなることもあり得ると述べた。

「TSCに多様性の要件がないことも、多少、違和感を覚える」とリトル氏は記した。べーレンドルフ氏への返信の中で同氏は以下のように述べた。

「TSCメンバーは個人であって企業ではないという点は正しい。だが、誰が媚びを売っているのかが分かる状況に皆、うんざりしている」

だが、イーサリアム・クラシック・コーペラティブ(Ethereum Classic Cooperative)のエグゼクティブ・ディレクター、ボブ・サマーウィル(Bob Summerwill)氏は、別の形で多様性が勝利したことに触れた。

2人の女性、アクセンチュアの新しい技術部門でテクノロジー・アーキテクトを務めるトレイシー・クアート(Tracy Kuhrt)氏と、IBMのオープン・テクノロジーズ(Open Technologies)でソフトウエア・エンジニアを務めるスウェータ・レパクラ(Swetha Repakula)氏が委員となった。

サマーウィル氏はメーリングリストで以下のように述べた。

「2019-2020年の委員にIBM関係者が多い状態は理想的ではないことに同意する。だが、何年にもわたって男性の候補者しかいなかったTSCで、立候補し、しかも選挙に勝利したトレイシー氏とスウェータ氏にこの場をお借りしてお祝い申し上げます」

coindesk JAPANより転用

ビジネス課題を最新IT技術で解決する
5G時代の4種の神器(IoT/クラウド/ブロックチェーン/AI)
最新IT技術で御社のビジネスを再構築いたします

関連記事