日韓関係が、過去最悪といわれる状態にある。
慰安婦問題がくすぶる中、レーダー照射事件や徴用工問題が物議を醸し、日本側からは半導体材料3品目の輸出管理強化と、韓国を「ホワイト国」から除外するという措置が続いた。すると、韓国政府はGSOMIA(包括的保全協定)を破棄する決定を下し、両国の間にある溝がさらに一段と深まった。
不穏な状況にある日韓関係だが、米国が積極的に仲介したがらないということもあって、この対立はしばらく平行線のままということになりそうだ。
ただ真面目な日本は、マイペースでこの状況に対応している。日本政府は8月30日までに、半導体材料3品目の輸出管理強化で痛手を受けている韓国サムスン電子に対し、半導体基板に塗る感光材の「レジスト」と、半導体の洗浄に使う「フッ化水素」の輸出を許可したという。
脆さを露呈した世界最大のスマートフォンメーカーであるサムスンだが、相変わらず新製品を発表するなど攻勢を続けている。例えば、一度発売を延期していた「Galaxy Fold(ギャラクシーフォールド)」という、画面を折り畳めるスマホを韓国で発売。またブロックチェーンのウォレットや、関連のアプリも搭載した「KlaytnPhone(クレイトンフォーン)」というスマホを国内のみで販売する予定だ。さらに、5G(第5世代移動通信システム)対応スマホも次々と世に送り出している。
そうした企業努力のかいあってか、米国で行われたスマホ満足度調査(関連リンク)では、サムスン製「Galaxy Note9(ギャラクシー・ノートナイン)」がトップに付けている。
筆者はサイバーセキュリティの取材・研究を行っているが、最近、そうしたサムスンの新しい試みの中に興味深いスマホがあると耳にした。日本のセキュリティ企業「Blue Planet-works(ブループラネットワークス)」と、サムスン傘下でサイバーセキュリティ事業を担うSECUI(セキュアイ)が、サイバーセキュリティに特化したスマホを発売するというのである。
便利になるスマホ、高まる危険性
最近では、スマホにはありとあらゆる個人情報が蓄積されている。日々の行動から、家族や友人、恋人とのコミュニケーション、買い物の内容、会社や取引先とのやりとり、銀行の口座情報など、挙げるとキリがないほどだ。もちろん全てをスマホなどで一括管理できれば便利で効率的だが、全てスマホから取り出せると考えると、少し気味悪いと感じなくもない。
少し前に、米国のあるセキュリティ会社幹部が、筆者にこんなことを言っていた。「銀行強盗も空き巣も、近い将来は無くなるかもね。スマホやPCにおカネも重要書類も全て入っている感覚で、そこで出し入れすればいい時代だから。カード決済やスマホ決済がこれまで以上に普及すると、人の生活など全ての情報が手元に集約されてしまう。便利だけど、とても危険だよ」
つまり、スマホに侵入されてしまえば、私たちは丸裸になってしまうだけでなく、何もかもを失ってしまう可能性すらある。しかも、私たちはスマホなどをあちこちに持ち歩いて、公共のWi-Fiなど、さまざまな通信に乗せてやりとりをするのだから、危険極まりない。また最近、スマホのアプリからマルウェア(悪意ある不正プログラム)に感染し、乗っ取られるようなケースも聞く。今後、さらにスマホが便利になるにつれ、外部から攻略されるリスクは高まってしまう。
現実にいま、スマホを狙ったサイバー攻撃が激増している。イスラエルのサイバーセキュリティ企業チェック・ポイントによれば、2019年の前半だけを見ても、前年比で50%もスマホへのサイバー攻撃が増加しているという。その主な原因は、モバイルバンキングなど金融取引をスマホでやる人が激増しているためで、金銭目的で狙われるケースが多いらしい。
しかもその攻撃レベルは驚くほど進化している。例えば、通貨換算アプリやバッテリー節約アプリなど害のないようなものに偽装している不正アプリも報告されている。その不正アプリは、スマホの金融取引でログインする際の数列をユーザーの知らないうちに記録したり、スクリーンショットを撮ったりするなどしてログイン情報を盗む。かなり巧妙だ。
「比較的安全」といわれてきたiPhoneすら、安心できないという話も出ている。先日米国で、iOSの純正メッセージングアプリであるiMessageで、メッセージを受信するだけでハッキングされてしまう欠陥が発見されたという話がニュースになっていた。すでにアップルは対策済みだと言うが、そうした脆弱性はまだ存在しているとの声もある。