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ブロックチェーン技術は2008年の仮想通貨ビットコインの誕生で、その中核を担っている技術の1つです。現在では様々な仮想通貨(イーサリアム、リップルなど)でもその形を変えて実装されている技術ですが、その技術が持つ本来の特性(分散型管理、セキュア、トレーサビリティなど)に注目が集まっており、ビットコイン誕生から10年経ち仮想通貨以外のビジネスへの応用を模索するフェーズへと移行してきております。
そもそも新しいIT技術は、それが様々な業界でビジネス的に応用され定着するまでにそれ相応の時間を要します。今では日常生活で当たり前となっているインターネット通信技術も最近のことのように思えますが、実はその基盤技術の誕生は50年前の1969年と言われています。ARPAnet(アーパネット:Advanced Research Projects Agency Network)と言われるコンピュータネットワークに遡ります。このARPAとは、アメリカ合衆国防総省の高等研究計画局で、アメリカ国内の4ヶ所をつないで開通し、徐々に接続エリアを増やしていったと言われています。これは旧ソ連との冷戦時代であり、電話網に代わる通信システムの開発が進められ、当時のインターネットの目的は「国防」といった軍事的な意味合いが強かったのです。
今まさにそのインターネット通信技術が辿った足跡をブロックチェーン技術が追おうとしていると言えます。
そんな中、先日2019年8月に会計監査法人の「ビッグ4」と呼ばれるDeloitteトーマツがブロックチェーン技術のテクノロジー進化とビジネスへの応用領域にフォーカスした「Deloitte’s 2019 Global Blockchain Survey – Blockchain gets down to business -」というレポートを発表しました。
本レポートは定点的に実施しているもので、2018年にも同様の視点でレポートを発表しています。そのため、今回の2019年版は2018年時点との比較項目もあり、どのような意識の変化がこの1年にあったのか、などが今回から初めて見ることができる点において非常に有用なレポート(定点調査という)となっています。
本記事では、そのレポートの内容について「調査概要」「調査結果のポイント(経年変化など)」「まとめ」という形で取り上げていきたいと思います。
調査概要の整理
世の中にはシンクタンクや調査会社などが様々なレポートを発信していますが、この調査概要をまず抑えることは非常に重要です。「どういった対象者に」「どのくらいの人数の方に」「どういった内容や手法で」調査をしたか、という点でそのレポートの信頼性・信憑性が問われます。
今回のDeloitteトーマツが発表した調査概要は以下の通りで、あくまでレポート内に記載された内容をまとめた形となります。割愛された調査概要があるかと思いますが、調査対象国や細かい条件が若干変更されている点をご認識ください。
本レポートの特筆すべき点は、広範囲な国々に対して、かなり絞った条件(年間収益5億/1億ドル以上の企業、エグゼクティブクラス、ブロックチェーンに精通)で実施されている点かと思います。
では、こういった方々にどんな内容を聴取したのでしょうか?すべてではありませんが、以下にて2019年版のみではありますが、注目すべき聴取内容を3つ整理しました。
ここまで調査概要を簡潔にまとめてみました。調査対象や聴取内容を踏まえて、直近や今後のブロックチェーン技術がどのように発展していくのかを知る上で、大変有意義なレポートだと思います。では、今回取り上げたこの3つの聴取内容からまずはブロックチェーン技術におけるポジティブな点を簡単に見ていきたいと思います。
増した重要度と浸透度
本レポートでは調査の結果として「金融分野(Fintech)がブロックチェーンの主導役であることに変わらないが、メディア、通信、ライフサイエンス、ヘルスケア、政府など、その取り組みを拡大させようとしているセクターや組織はますます増えている」とした上で、「ブロックチェーン技術に接する機会が増え、日々の実際のビジネス上のユースケースにおける利点と欠点について理解が深まり、統一した見解として練られてきている」と述べています。
全体の半数以上が「ブロックチェーンが重要かつ戦略プライオリティの上位5つに入る」と回答
「今後2年以内での、自社におけるブロックチェーン戦略のプライオリティは?」という問いに対して、今回の調査では全体の53%の方々が「重要かつTop5の優先事項である」と回答されています。また、この聴取内容は2018年との比較もできるようになっており、2018年で同内容に対する回答が43%だったため、1年間で+10ptの増加が見られました。前述の通りこの調査の回答者は、企業規模が大きくエグゼクティブクラスの方たちであるため、その信憑性は決して低くないと推察されます。また本レポートの冒頭にこちらの内容が掲載されているため、今回調査の最も特筆すべき調査結果と言えるでしょう。
ブロックチェーン技術が様々なビジネスに浸透へ
その他、ブロックチェーン技術への意見で該当するものを選ぶ設問においては、「ビジネスケースで有用である」と回答したのが83%と多数を占め、これも2018年比が74%だったので9ptアップ。「既存の記録システムをブロックチェーン技術に変更する」と回答したのが69%→81%(+12pt)、「ブロックチェーン技術を導入しないと競争優位性を失う」と回答したのが68%→77%(+9pt)となっており、ブロックチェーン技術への理解度が深まっている点や技術研究が進んだことで応用可能性が現実を帯びてきている点などが読み取れる内容となっています。
まとめ
2019年の本調査結果では、ブロックチェーン技術の応用が徐々に成熟化してきており、同時に2018年時に想定されていたよりも、その技術自体が提供する利点が広範囲に及ぶ可能性があるものとして再認識されてきている変化も見て取れると考えられます。
ただ、以上に挙げたポジティブな側面だけではなく、導入に際しての障壁があることも事実でそちらについて次回後編で触れたいと思います。
*本記事はDeloitteトーマツの“Global BlockChain Reseach”を元にABCD WORLD.netがオリジナルで作成したものです。