ジャスミーは、IoTのセキュリティレベルを高度化するための方法として、「ブロックチェーン上に「KYM」(Know Your Machine)という仕組みを構築する」(吉田副社長)という。
KYC(Know Your Customer)は本人確認のことを指すが、その“モノ”版がKYMというわけだ。KYMに加え、ブロックチェーン上で動く分散型アプリケーション基盤「スマートコントラクト(機器同士があらかじめ決められたルールで認証や動作する仕組み)」を組み合わせることで、頑強なセキュリティレベルを構築できるというのだ。
その際のポイントとなるのは、ブロックチェーンが分散型(P2P)のネットワークである点だ。つまり、メーカーのサーバなど介すことなく、ユーザーが自分のスマホアプリから直接自宅のエアコンにアクセスする形だ。
吉田副社長は「KYMでスマホとIoT機器間で本人(機器)であることの真正性が保たれ、スマートコントラクトで不正アクセスを排除することができる」と胸を張る。
ブロックチェーンで構築したIoTプラットフォームでは、スマホとエアコンがP2Pで接続し、KYMとスマートコントラクトで高度なセキュリティが確保できる。
データ販売の仲介業というビジネスモデル
ただ、吉田副社長は次のように話を続ける。「IoT向けのセキュリティを提供するだけなら、ビジネスモデルとして弱い」というのだ。そこでジャスミーが計画しているのは、IoT機器の所有者が生み出す各種データを、それを必要とする企業と取引するための、データマーケットを組成するというのだ。
データというのは、ホームオートメーションの分野でいうと、エアコンの稼働時間や温度設定、テレビの視聴記録、音楽の好みといった、ネットに接続した家電が生み出す生活にまつわるあらゆるデータだ。そういったデータは「宝の山」と位置付けられることもあり、これらのデータを新しい商品・サービスの開発やターゲット広告といった分野のビジネスに生かしたい企業に販売するわけだ。
「機器が生み出すデータの所有権は、IoT機器の所有者にあるので、販売するには本人の許諾を得ることはもちろん、個人を特定できないように加工した上で取引する」(吉田副社長)と財産権や個人情報保護にも気を使うという。そしてユニークなのはここからだ。
「企業に販売した売上の中から、取引に従事した参加者の手数料を引いた分を機器の所有者に戻す形になる。ポイントのような形で還元することを考えている」(吉田副社長)
そのポイントが、どのような属性のもので、どこで利用可能かといった詳細は未定だが、ネット家電を日々利用することで、無意識にうちにポイントが貯まるというのは、生活者目線でうれしい話だ。
実際、別の事業者のものではあるが、スマホの専用アプリから得られる移動距離、位置、加速度、歩数といったデータを送信する代わりに、ポイントが付与され、それをポイント交換サイトで使えるエブリセンスというサービスも稼働しており、筆者自身もユーザーだ。ジャスミーの構想は夢物語でも何でもない。
冒頭で「ポイントを暗号資産に交換できれば……」と言ったことを、筆者の空想として記したのだが、ここまで読んでいただければ、それは決して「夢物語」でないことはご理解いただけるだろう。