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先日10月12日に台風19号(ハギビス)が日本の都心部を直撃し、その被害や救出活動などの報道がトップニュースとなっており、その被害規模は甚大でした。政府も非常災害対策本部を開き、補正予算も視野に検討に入り、被災された方々が一刻も早く日常へ戻れることを願うばかりです。
一方、外に目を向け海外の動向は?というと、これまた違うビッグニュースで一色でした。
「Facebook社の仮想通貨「Libra」に大打撃」
「Libra崩壊危機」
さて、何が起きたのでしょうか?
Libra協会の創立メンバーから決済サービス大手のVisaやMastercardなど計5社が離脱を発表したという。
まだその構想発表から4ヶ月弱しか経過していませんが、各界から期待と不安の声が漏れ聞こえる中で、どちらかと言えば向かい風での船出となったこのFacebook社の仮想通貨Libra/Libra協会とは何なのでしょうか。
そもそもLibraとは何か?
経済界において事前に噂されていたものの、その構想が発表されたのは2019年6月18日。
当時、単に「世界屈指のIT企業Facebook社が仮想通貨業界に参入」という点で、他の仮想通貨と根本的に異なり、話題性は抜群でした。
同日に配信されたホワイトペーパー(白書)内の冒頭でLibraのミッションはこう定義付けられています。
“Libra’s mission is to enable a simple global currency and financial infrastructure that empowers billions of people.”
(出典:Libra協会 WhitePaperより)
「数十億人が利用できる、シンプルで国境関係なく機能する通貨及び金融システムを創り出すこと」
ビジネスの基本は課題解決と言われます。今まで不便だったものを新しい技術やその他手法で解決する。
では、このLibraミッションはどんな課題認識からビジネスチャンスがあると考えられているのでしょうか?
(1)金融サービス格差の是正
2017年時点で世界総人口は76億人と言われており、世界銀行によればその内の17億人(実に約4人に1人)は銀行口座を持っていないと言われています。アフリカやアジアの発展途上国を始め、経済が急成長を遂げた中国やインドでも約2億人前後がそれに含まれているという。その理由は貧しさだけでなく、口座開設に伴う費用、手続き、銀行までの物理的な距離が原因であると世界銀行は指摘しています。
銀行口座を持てないことの不利益は大きいです。高金利の貸金業者に頼らなければいけなかったり、社会的信用を保証できないため、融資を受けることが困難であったり、予想外の事態を想定し保険をかけることが難しかったりします。
金融包摂(きんゆうほうせつ)(Financial Inclusion)という言葉が昨今取り上げられていますが、世界銀行の定義は「すべての人々が経済的に不安定な状況を軽減するために必要とされる金融サービスにアクセスでき、またそれを利用できる状況」とされており、Libraが実現したい世界もこれに類似していると考えられます。
(2)より流動的で割安な資金移動を実現
Facebook社のマーク・ザッカーバーグCEOは、とある講演で「写真を送るような感覚でお金を送れるようにしたい」と口にしています。日本ではあまり馴染みがないが、発展途上国においては海外に出稼ぎに行くことは珍しくないです。そして海外で得た資金を母国に送金することも多々あります。実はこの国際送金ビジネスは世界で年間5兆円超の市場規模があると言われており、その際の送金手数料は平均7%と言われています。そして、タイムラグもあり不便。
ただ、仮想通貨取引所でドルや円をLibraに交換し、スマホなどで送金すれば、低い手数料で瞬時に相手先に送金が可能となります。
まさに「写真を送るような感覚で」。
つまり、Libraの掲げたミッションを素直に捉えるならば、今現在金融サービスを利用できてない人も利用している人も通信端末1つあれば、より利便性の高い金融サービスを受けることができることになると想定されるのです。
そもそもリブラ協会とは何か?
そのミッションを実現するために、2020年前半には仮想通貨Libraを発行することを目指しており、それとともに発表されたのは「Libra協会」という組織。その顔ぶれが錚々たる企業群ですごいのです。 Facebook社を筆頭に、今年5月にIPOをしたUber、仮想通貨取引所として初のユニコーン企業(未上場で企業評価額が10億ドル超)のcoinbase、さらには決済機関大手のPayPal、VISA、Mastercardなど全28社が名を連ねていました。
*実際は29社。Facebookの子会社であり、リブラのネットワークをベースにした金融サービスの開発と運営を行い、デジタルウォレットシステムを提供するCalibra社はFacebookとひと括りでカウントしているため、28社。
これだけの大連合を集めて、仮想通貨業界に参入する計画を打ち出したFacebook社。
*厳密にはこのLibraが仮想通貨として定義されるのかなどは別議論がありますが、一旦ここでは内容をシンプルにするため仮想通貨として扱います
今現在の仮想通貨業界において、ビットコインを筆頭に様々な仮想通貨が誕生していますが、各個別でどんなガバナンスを設計し運営するかは、ひとつの至上命題となっており、難しい問題と捉えられています。(非中央集権的ガバナンス問題という)
Facebook社は業界参入に際して、そのガバナンス維持のために、「Libra Association(リブラ協会)」という組織を結成し、そこで仮想通貨Libraの価値安定や管理・監督を行う機能を持たせる構想を打ち出しているのです。
次回、本連載Vol.02ではLibra協会の機能や加盟条件について詳細をお伝えしたいと思います。